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今回のテーマは「夜」





→孤高の彼女の残影





彼女は月を見るのが好きらしい
それが空に浮かんだものであれ、水面に揺らぐものであれ、目に入るとふと手を止め、見入ってしまうのだとか

勉強を教えに来たのだけど、熱中するあまり帰宅を予定していた時刻を過ぎ、厚かましくも夕餉のご相伴に預かってしまい
一人の帰路に何の不安も無いのだけど、彼女は付いて来ると頑なに譲らなかった
寧ろ彼女が私を送った帰り、一人になってしまう方が不安でならない



「大通りに出るまでは絶対ご一緒しますから!」



砂漠の使途との戦いから、彼女は大人しく私の言う事を聴かなくなった
聴かなくなった、なんて、何様のつもりか?
過った思考に一人自嘲する

元より彼女は、変に頑なな所があったように思う
薫子さんの孫である以上、これから口も達者になっていくんだろうかと思うと…少し頭が痛くなる
彼女の家を出て、少し歩いて、街灯と街灯の間
月明りが足元を照らすのに気が付いて、彼女が足を止め、顔を上げた



「……」



見入って、動かなくなった
釣られて私も見上げてみるけど、彼女程興味を惹かれない

細い路地でも車が通らない訳では無いから、道の端に寄って、何にも邪魔をされないように



「……」



こうして見惚れているのもいいのだけど、そうして彼女の帰りが遅くなるのはご両親に申し訳ないと思う
早々自分の世界から引き上げて、早々帰路に着かなければ
そう思いながら、私は、彼女の名前を呼べないでいる

つぼみ

と、平仮名三文字を紡げないまま、口を固く結んだまま
肩に掛けられない右手は宙を彷徨って、情けない事この上ない
バイクが横切る、近くの家のテレビから何らかの歓声が聞こえる
この世界にまるで、二人きり?



「済みません、足止めちゃって」



驚いた事に、彼女は自分で戻って来た
それほど長くない時間だったけど、うだうだしていた分、私一人の体感時間が長くなったのかもしれない
降ろそうとした情けない右手が、取られてしまった



「ゆりさんは、ここに居ますもんね」





彼女は月を見るのが好きらしい
月を通して何を見ていたのか、なんて、聴く気は無いけれど

[月が綺麗ですね]と、どうか、言われませんように





了.



[只今のお礼:テイルズ +3、プリキュア +3]






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